鷲子山上神社は、茨城県常陸大宮市鷲子と栃木県那珂川町大那地をまたいで山上に鎮座する神社。参道に両県の社務所が向かい合って建っています。阿波国の製紙の神、天日鷲命(あめのひわしのみこと)を分霊し、祭神にしたと伝えられています。社伝によれば、天長5年(828)、付近の里に疫病が流行し、病死者が続出したために、大己貴命(おおなむちのみこと)と少彦名命(すくなひこなのみこと)の2柱も併せて祀り、病難消除を祈ったといいます。
始まりは不明ですが、古い時代より鷲子地区をはじめとする美和・山方・緒川・御前山地域(大宮地域を除く常陸大宮市全域)や、その地域に接する馬頭や烏山などの栃木県那須地域では、和紙の生産が盛んでした。紙漉きを行う家々では、鷲子山上神社を生業の拠り所として、毎年正月に和紙一帖を納めたそうです。現在はわかりにくくなっていますが、神社境内北側に紙漉沢と呼ばれる場所があり、そこで神に捧げる紙を漉いたともいわれています。
大きな祭礼は、毎年11月中旬に行われている神秘的で古い伝統を感じる「夜祭り」と、7月中旬に行われる「祇園祭」です。今では、「夜祭り」は栃木県側の氏子たちによって、「祇園祭」は茨城県側の氏子たちによって行われ、祇園祭は4~5年に一度、神輿の渡御(とぎょ)が行われ、6台の山車や屋台が付き従って鷲子地区を練り歩きます(鷲子山上神社祇園祭)。
鷲子山上神社本殿は、茨城、栃木両県で文化財として指定しています。このような例も稀でしょう。また、境内のカヤの大木も県指定天然記念物になっています(鷲子山上神社のカヤ)。