大宮地域下村田にある、戦国期の画僧 雪村が作画に用いたと伝えられる湧水です。市の史跡に指定されており、公園として整備されています。
幕末の辰之口江堰の役人 加藤寛斎(かとう かんさい)がまとめた『常陸国北郡里程間数之記(ひたちのくにほくぐんりていけんすうのき)』には、「雪村翁は下村田の生まれで、その画家としての名は天下にとどろいている。地元の人々は翁がどのような出自の人か詳しくは知らない。翁の屋敷の跡が西の山の中腹にあり、里の人々は雪村屋敷と呼んでいる。ここから100~200mほど東に清水が湧き出ているところがあって沼となっており、根が30㎝余もある芹が生えている。昔は近くに柳があったが枯れて今はない。雪村翁は常にこの井の水を使って画を描いていたので、”雪村面影の井”または”硯の井”とも言うそうだ。」とあります。
現在も清らかな水が湧き出しており池となっています。周囲の人々は水神を祀り、ポンプで汲み上げて生活用水としても利用しています。
(参考/常陸大宮市歴史民俗資料館 企画展図録『水戸と奥州をつなぐもうひとつの道 南郷道』2014)